陶芸のすすめ

備前焼

備前焼は現在の岡山県にあたる備前の地で生まれた陶器の種類で、現在でも根強い人気を誇る陶芸のひとつです。備前焼の特徴は、釉薬を使わず にじっくり温度を上げながら焼き締めることにあります。そのため、基本的には土の質感をそのままに、茶色から黒に近いような色目をしており、他の地方の華 やかな陶器に比べると、全く違った趣をしています。その無骨なまでの素朴なたたずまいは、まさに陶芸の原点ともいうべきもので、独特の雰囲気は日本人の好 む「渋さ」を感じさせるのです。どっしりした厚みを持つものが多く、繊細というよりは素朴な味わいを求める人に人気のある陶器です。
備前焼は釉薬を使わないため色彩などはとてもシンプルなのですが、「窯変」と呼ばれる独特の装飾を施したものもあります。色付けを行ったり釉薬をかけるこ とによる装飾ではなく、窯変の場合は窯の中で焼くうちに陶器が灰に埋もれたり、陶器と陶器がくっつかないようにその間に藁を挟むことがあるのですがその部 分が赤く焼けあがるなどの原因で独特の模様が生じたものです。これらは、はじめは窯の中で偶然に行われていたことだったのですが、陶芸家はこの窯変を意図 的に起こすことで、備前焼に装飾を施すようになったのです。もちろん意図的とはいっても灰のかかり具合などは焼いてみないとわからないところも多く、思い 通りの模様にするのは非常に難しいため偶然の美しさを期待するところも多くなります。しかし、それも備前焼の魅力の一つで、人間の手による装飾ではない自 然の魅力を感じることができるのです。火の近くに置かれていた作品に生じる、多くの灰が溶けて流れてできた窯変は「玉だれ」、藁を巻いてその部分に生じさ せた窯変は「ひだすき」と呼ばれ、備前焼では現在でもよく使われる手法になっています。現在でも岡山県に行くと、湯飲みや徳利、花瓶など多くの備前焼が売 られているので、ぜひ使ってみてください。シンプルですが飽きのこない備前焼は、普段使いにも最適の陶器です。手になじむ土の感覚は不思議な落ち着きを感 じさせてくれますよ。

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